年明け報告

新春第一回の更新がすでに1月後半とは…。KICK-ASSの感想アップも時すでに遅し。もうみなさんも忘れてる頃だろうからこのままなかったことにしよう(笑)。じつは12月にオーダーした新デスクトップPCが昨年内に到着せず、ようやく1月6日に来たのだが、その設定やらデータの移動などをタラタラやっていたら、こんな時期になってしまったというわけでございます。その間にも3日には関西人中心の親族のなかで数少ない関東在住の叔父が他界した連絡を急に受けて正月気分もどこへやらバタバタと弔問やら通夜・葬儀と出かけたりしてなんやかんやと更新が遅れまして……
まあ、更新できなかった言い訳はこのへんにして、とにかく新しい2011年が始まっております。本年もどうぞお時間のあるときに純喫茶アカザル、倍旧のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
さて年明けから読んだり聴いたり見たりしたものを今日は備忘録的にダラダラと並べてみますぞ。

ハインリッヒ・シュリーマンシュリーマン旅行記 清国・日本』(講談社学術文庫:石井和子訳)
トロイの遺跡を発掘したことで知られるシュリーマンが、世界旅行の途中に幕末の日本を訪れていたことは知らなかった! 一カ月ほどの滞在中に江戸や横浜、町田や八王子などを訪れているのだが、東京のいろいろな場所や、春によく花見に行く横浜の豊願寺(ぶげんじ)なども登場するこの手記は個人的にも非常に興味深い。幕末の武士階級から、吉原の街の様子や公衆浴場や商店など庶民の暮らしまで詳細な観察をしていて文化史的資料としても重要なものだ。なかでも、慶応元年に十四代将軍徳川家茂が江戸から上洛した際の将軍行列の観察記は、隊列の順序の記録を錦絵と見比べながら読むとまるで自分が沿道で公方様の行列を盗み見している一人の町人のような気分になる。また、この本の前半は日本の前に訪れた清国に関する記事なのだがシュリーマン氏、当時の清の不衛生ぶりに相当辟易としたらしく、江戸に上陸してその清潔な街の様子に驚嘆し、日本のことが非常に気に入っている様子が記事の随所に表れている。武士の世から転換しようとしていた日本の生の姿を生き生きとスケッチしたシュリーマン。彼はこの6年後にあの世紀の大発掘を成し遂げる。ルイス・フロイス(『完訳ルイス・フロイス日本史』中公文庫)にも感じることだが、その時代に本当に生きた人の記録とは、歴史上の人物の肉声を聞くような興奮を読む人にあたえてくれる。

松本清張『象徴の設計』(文春文庫)
明治の元老、山縣有朋が、「軍人勅諭」を完成させるプロセスを描いたお話。大日本帝国陸軍を増強するために天皇をいかにして「現人神」という超越的象徴に仕立て上げていったか、「絶対服従」という縦の論理をどう形づくっていったかがわかる。また明治11年の竹橋騒動(近衛兵の一部による反乱)に始まり、その後の明治10年代の自由民権運動を山縣が密偵政治によって弾圧していった富国強兵政策の裏面史も語られていて興味深い本である。残念ながら絶版だが、私はラッキーなことに神保町の三省堂書店の棚でひょっこり見つけた(笑)。

津田大介牧村憲一『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ
音楽を聴く・買うスタイルが変貌している時代に、アーティストが自由に発表・販売できる新しい音楽レーベルのかたちを考察する対談。アナログやCDなどパッケージ人間の私も、最近では配信で音楽を楽しむケースも増えてきた。過去から現在までの音楽視聴のあり方を時代を追って俯瞰できるこの本は、自分のこれからの音楽とのかかわり方を考えるうえで刺激になった。

みなもと太郎世界名作劇場ハムレット』(マガジン・ファイブ
この中に収録されている「モンテ・クリスト伯」(初出「週刊少年マガジン」1972年4/2日号〜3回連載/講談社)を当時小学生の私は読んで、その後にデュマの原作の小説を読んで面白かったので、それから小説をいろいろ読むようになったという、記念すべき契機となった漫画なのである。何年も、この作品をもう一度読んでみたいと思ってずっと探していたが、今は便利ですね。Amazonで検索したらなんと一発で発見。約40年ぶりに再会。

沢田研二『人間60年ジュリー祭り ザ・タイガースから今日まで ROCK'N ROLL MARCH』
2008年12月3日東京ドームで行われたジュリーのライブ。全80曲ノーゲスト、一人&バンドだけで歌い切った空前絶後の超強力ライブコンサートの実況盤。じつは私、当日見に行きました。たしか6時間以上、一回休憩はさんだだけで、基本的には歌いっぱなし。沢田御大の歌手としての実力に驚愕しました。年末のカラオケでもらった賞金を購入資金の一部にあててゲット(笑)した6枚組。あらためて聴きなおしてみてもこのライブ凄いわ。

あがた森魚『20世紀漂流記 あがた森魚ベスト』
急に無性に聴きたくなって、ナカノブロードウェイの中古CD屋で購入。『大寒町』が染みますわ。

■青葉市子『剃刀乙女』
期待のガットギター弾き語り人。今のJ-POPシーンは完全に終わってますが、インディーズシーンには日本にもけっこういい人いまっせ。これで20歳。天才。

■ギンザ・グラフィック・ギャラリー第294回企画展『秀英体100』
明治のはじめに生まれた書体「秀英体」の生誕100周年を記念して開催されている展覧会。たまたま新橋から銀座に歩いていて通りかかったので見学したら、これがなかなかの展示でして……1階では著名なグラフィックデザイナー25人(これが大変なメンツ)が「四季」をテーマに秀英体を使って作成した新作ポスターが展示されている。中でも私がグッときたのは、三木健氏のポスター。真っ白な紙の上に極細のラインで構成された細かな柄が敷かれていて、その中に複数の「雪」の文字がうっすらと描かれているですが、まるでその雪がハラハラと舞うような感じなのです(わが目を疑うとはこのこと!)。そしてその文字の上に手をかざすと、強烈なスポット照明を受けているので手の形の黒いコントラストの強い影によって「雪」の字がふわっと消える。スノーホワイトの紙色に影絵のような手のシルエットという、白と黒の静謐なモノトーンの世界が現れるのだ。かっこいい!
このほかにも、さすがは当代の一流のデザイナーの作品! と唸るようなポスターや展示がいろいろありました。優れた書体はよいビジュアル表現を生むと実感。1月31日まで開催中。その後大阪等にも巡回予定とか。 
ギンザ・グラフィック・ギャラリーのページは http://www.dnp.co.jp/gallery/ggg/

ああ、それにしてもPC標準のIMEだと文字入力アホすぎていかんわ(笑)。早くATOK入れよう。
シュリーマン旅行記 清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))象徴の設計 (文春文庫)[rakuten:neowing-r:10321446:image:small][rakuten:neowing-r:10138749:image:small]剃刀乙女