カッサ・オーバーオールのバンドに、久々にぶっ飛ばされた夜

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カッサ・オーバーオール Kassa Overall(2023.10.19渋谷 wwwx)。

 

アルバム『ANIMALS』の実験的な音づくりに惹かれて、これは絶対に見なくては! と駆けつけたライブですが、その予想はいい意味で裏切られました。むしろKassaを含むミュージシャン4人の底知れぬ演奏力とライブバンドとしての強靭さを感じた夜でした。以下メモ。

 

 

ドラムス(Kassaとパーカッションの2人が入れ替わり立ち替わり叩く!)、パーカッション×2(Bendji AllonceとTomoki Sanders 。Tomokiはソプラノサックス兼務)、キーボードにサンプリングパッド(って、ほぼ全部が打楽器じゃん!)が繰り出すブっと過ぎるグルーヴの波状攻撃。これはヤバい。鍵盤担当 Ian Finkelsteinは強烈なシンべでバンドを推進する一方でカッチョ良すぎの和声を添える一人で二度美味しい活躍ぶり。Kassa先輩は時にはセンターでラップや案外繊細なボーカルを、時には舞台下手ドラムサイトで凄まじいゴリゴリパワーと的確なテクのハイブリッドな演奏を見せつける(正確無比なストロークを見てるだけでオシッコちびりそう)。そこにパーカッションとシンベが絡み合って生まれるアフロな(でも新しい)リズムの大波が幾度も押し寄せフロアは溺れ死ぬ人続出!  いや、むしろグルーヴの波のトップの上昇とともにどんどん身体が浮揚し、どいつもこいつも天まで昇る勢いだ!


そう、この夜のwwwxは妙な多幸感とポジティブなエナジーに包まれていた。その泉の源にはおそらくカッサの曲のメッセージと、何かをブレイクスルーしようとする創造への意欲があって、メンバーたちのオーディエンスと繋がろうとする善いバイブスやエンタテインする姿勢もあったと思う(トモキの髪に飾られたお花がいい華やぎを空間に添えていたし、2度のダイブも!)。

 

そして、エレクトリック期のMilesバンドや黒人音楽史を彩るレジェンドたちの映像プロジェクションをバックにした彼らの演奏は、アヴァンギャルドで最新鋭の音のはずなのに、まるでこれこそがブラックミュージックのメインストリーム、創造(あるいは解放)の道を切り拓いて来たマイルスたちの精神を受け継ぐ正統な音と思えてくるし、実際そうなのかもなと感じた(一瞬ね)。

 

ステージ最終盤には、たまたま同じフライトに乗り合わせていたというテデスキ・トラックス・バンドのKebbi Williams(tenor saxophone)も1曲参加し、これまたクソかっこいい魂のブロウでぶっ飛ばしてくれた。アンコールはRyuichi Sakamotoへの鎮魂の祈りを込めた戦メリのカバーからのWho’s on the Playlist ……いやぁもう最高。


満員電車状態のオールスタンディングで身動きはほぼ取れず、多少揺れたりハンズアップするのが精一杯でけっして快適な環境ではなかったけど、激しく盛り上がり、四方のお隣同士とは家族以上に接触😆 でも古いフレーズで言うと人類みな兄弟姉妹のオープンマインドな気持ちだったから無問題(ずっと動画撮ってる人だらけで、そのスマホで隠れてドラム見えねえよ!と少しだけ思ったけどいつもほどは気にならなかった。楽しいから)。ピースフルでポジティブな会場のバイブレーションのおかげで約2時間弱(オープニングアクトから数えれば3時間足らず)あったのに疲れることはなかったかな。おれアラカンだけど。

 

終演後はノックアウト状態でクラクラしながら歩いて(脚の方はヘラヘラ笑ってた)、気づいたら電車に乗っていた。このバンドはパーマネントなものじゃなさそうだから一期一会かもだけど、Kassaの動向からは今後も目が離せないぞと思った。そして、今日のはここ近年でベストライブの一つだったよねと自分で自分に語りかけたのである(お終い)

 

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