ほぼ満月の夜に

例えばMarc Bolanのライブ映像を見るボクらは同時に、彼が死んだ事故現場の写真、ローバーミニの大破した写真も知っている。
ヘンな感じ。
Jimi Hendrixのライブ映像を見るボクは実際に、ジミヘンが死んだサマルカンドホテルを訪れたことがある。ジミヘンのライブはあまりに熱く、サマルカンドホテルの思い出はあまりにも静かだ。
そして仕事場からの帰り道、今は亡き友とスタジオで録音したRockのカバー曲を聴きながら歩く(ふと気づいたが友の月命日だった。空には「ほぼ」満月。月の観測が好きな男だった)。ボクはコミカルなまでにオリジナルのアーティストに成りきって歌う彼の歌に思わずクスッとなりながら、同時に、歌声の主の骨を拾ったあの日のことを思い出す。こんなとき、自分の中の時間や空間、時系列の概念がメチャクチャになる。映像や音楽というのはそんな力をもっているのだ。大きなものを超える力。