YMOを野外で体験

YMOをはじめてナマで観た。もっとも、YMOのメンバー3人をナマでというのは2007年7月の日比谷野音の細野氏生誕60周年記念祭で体験済みだが、ナマ演奏を聴くのは人生初、ということで8月9日(日)にWorld Happiness2009(江東区夢の島公園)へ行ってきた。
台風が近づいていたためか非常に蒸し暑い日だったが、幸い雨は一度も降らず(同日サマーソニックが開催されていた幕張では大雨だったそうだ)、芝生の上に主催者支給の本秀康氏イラスト入りレジャーシートを敷いて、ときに足を投げ出して座り、ときに立ち上がってと、マッタリと半日のプログラムを楽しんだ。
多くのアーティスト・バンドが登場し(スチャダラパー最高!)、すでにステージには照明が入る時間帯になり、相対性理論のタイトな演奏が終わると夕闇を背景にYMOが登場。細野氏・高橋氏・坂本氏の3人+小山田圭吾(ギター)、高田漣(ペダルスティール他)、権藤知彦ユーフォニウム)という編成。一曲目、なんとThe Beatlesの“Hello, Goodbye” それも、ほぼ完コピ&正面のビジョンに歌詞テロップ付き。意外すぎる展開に、「まさか、このままカバー曲大会に突入するんじゃないだろうな」と一抹の不安と期待を覚えたが、二曲目“Rescue”の第一音が発せられた瞬間から、ガラッと違った世界に連れていかれた。
なんというのか、ベースとなるのは緻密にプログラミングされた音たちであり楽曲はあくまで洗練されているのだが、そこにはどことなく人間くさい味わいがあって、力強さやドラマ性を感じるのだ。一曲の中に大きなうねりというか波のようなものがあって、そこに小舟に乗って漂っていると細い川から大海原に連れて行かれたり、あるいは色彩豊かな天体観測を楽しんでいるような気分にもなる。ここには、80年頃に聴いていたYMOの記憶とはずいぶん異なる「オーケストラ感」があるのだ。曲が進むなかでこの意外な感覚を確かめるために少々分析的に耳をそばだててみた。すると聞こえてくるのは、プログラミングされたサウンドの上に乗っかる細野氏のベースの揺れであったり、幸宏氏のやや音圧を高められたキックやスネアの音であったり、坂本教授の細かなタッチのニュアンスすら拾っていくオーガニックなキーボード音であったりする。そう、こうした身体性の高いナマ演奏の要素が全体としてのヒューマンな味わいを生みだしているのだ。そして高田漣の哀感あるペダル・スティールが各々のデジタルな要素を連続性のある音でつなぎ、小山田圭吾のエキセントリックながらもどこか人工的な感触のあるギターがYMOらしい未来感を醸し出している。いつしかボクは、90年代に見たKing Crimsonのライブを思いだしていた。緻密なのに人間くさい。冷たいのに温かい。構築されているのに破壊的。そう、これはRockのライブだなあ、と。そして「わが国の輸出商品として恥ずかしくない品質だなあ」と、へんな感動をしたのである。
そういえば、高校の学内放送でYMOのソリッド・ステイト・サヴァイヴァーのLPをかけたらウケたっけ。あれから約30年、YMOはけっこうとんでもないところまで行ってしまっているのではないかと感じ入ったライブであった。うーむ。

セットリスト:
01)Hello, Goodbye(Lennon & McCartney) 02)Rescue 03)Thousand Knives 04)The City of Light 05)Tibetan Dance 06)Supreme Secret 07)Still Walking to the Beat 08)Riot in Lagos 09)Rydeen 79/07 Encore)Fire Cracker


さて、お盆に1000円高速道路の恩恵を被ろうと思っていた私だが、東名高速の崩落を見た瞬間にAIRと帰りの新幹線を予約(笑)。まあ結果的には車で帰っても大丈夫だったようだが、おかげで移動はラクに済みました。カネはかかったけど。
そして明日から現実の世界へ。とほほ…