『愛の渦』、これは世界に誇る人間ドラマの傑作ではあるまいか!

三浦大輔監督作品『愛の渦』を初日に見た。本作の舞台は、とある高級マンションの一室、その乱交パーティーの会場に集まった見ず知らずの男女が繰り広げる駆け引きと“人間模様”が見どころだ。

料金は男2万円、女千円、カップル5千円、時間は午前0時から5時まで。面倒なプロセスなしで誰とでもいいから性交したい、その一心でマンションの呼び鈴を押したはずの男女(計10名)なのに、いざ蓋を開けてみると、実際のセックスに至るまでの駆け引きがあり、好悪や羞恥、虚栄、侮蔑などさまざまな感情が顔を覗かせる。

ここにこの映画の興味がある。すべての殻を脱ぎ去り、ただの裸の動物になったつもりでも、なおそこに残るものは何か。それが人間と動物とを分かつものなのか。この疑問はやがて「人間とは何か」「性とは、社会とは」といった根源的な問いに姿を変え、映画を観る者に突きつけられる。

そう、これは倫理ではなく、むしろ人間観を問われる映画なのだ。胸が苦しくなったり、思いもしない台詞に笑ってしまったり、優れた人間ドラマでもある。おそらく(倫理観と宗教的戒律の厳しい国を除いて)この映画の提示する問いは普遍的であり、人類共通だろう。この究極の設定を発見し、エンタテインメント作品に仕上げた監督、関係者、そして俳優の方々を称えたい。

ひと言ひと言の台詞と俳優陣の演技はとくに素晴らしく、映画を見終わってから、俳優とは何か、演じるとは何か、脚本とは何かという新たな問いも心に湧き始めたほど。身体も心も裸になり演じる役者たちはもちろんのこと、店長役の田中哲司、店員役を演じた窪塚洋介も好演。とくに窪塚を見ていて、この映画こそ彼の真のカムバック作品であり、これからのさらなる活躍が期待されると感じた。

R-18で全裸のセックスシーン満載の映画だが、不思議なほどにエロさはない。18歳以上の万人におすすめしたい、人間ドラマの「傑作」である。




映画のあらすじ等は
『愛の渦』公式サイト
http://ai-no-uzu.com/