満島ひかり映画祭で聞いたひとこと

9月17日(土)は、ららヨコハマ映画祭2011「満島ひかり映画祭」に行きました。この日封切りの映画『ラビットホラー3D』に加え、『かけら』『川の底からこんにちは』『愛のむきだし』と、満島ひかり主演映画をまとめて見られるイベント。私は最後の上演前トークショー付きの(!)『愛のむきだし』のチケットを買いました。園子温監督作品でもあり以前から見たかった映画だし、クルマで20分程度の近さのシネコンの大スクリーンで見ることができるし、しかも満島ひかりさん本人も見られるとあっては行かない理由がありません(『川の底から〜』は以前ロードショーで見ました)。

17時30分から、映画上映に先立ってトークショーがスタート。映画祭の委員会の方のインタビューに満島さんが答えるという形式で進みましたが、話を聞いて感じたのは、じつに明晰な人だなということ。伝えるためのコトバをしっかり持っていて、しかも熱さをもって伝えることのできる人だと思いました。なかでも印象に残ったのは、インタビュアーの方が紹介した、過去のヨコハマ映画祭で主演女優賞を取ったときの彼女の受賞挨拶。そこで満島さんはこんな発言をします(注:私の記憶です。正確ではありません)。

「街角の普通の人たちの届かない思いを、がむしゃらに伝える女優でありたい」

このコトバ、グッと胸にきました。満島さん自身も、少女時代には胸のなかに言いたくても言えないさまざまなモヤモヤとした思いを抱えていたそうで、そうした普通の人たちの思いを伝えられる媒体(=俳優)になりたいという意味だと私は解釈しました。自分が評価されることを目標にしてしまうと広がりがなくなる。例えば人から“いいね!”と言われるのは気持ちがいいから、ついついそのことを目標にしてしまいそうになるけれども、それでは小さく閉じてしまうようでイヤだとも語っておられました。
自分が俳優として存在する意味をしっかり定めて、ひとつ上の次元の使命感をもっているのですね。彼女の演技に感じる「熱」や、同年代のほかの女優にはない心をうつサムシングは、こんな心構えの奥に源泉があるように思えます。
この発言を聞いて、はたして自分は自分の仕事や存在についてここまでの使命感や目標を持ち得ているか? と思わず自問してしまう私がいるわけですが、その点ではお恥ずかしいかぎり……。しかし、彼女の発言から気づかされたことがあります。それは、「自分がしたいこと」を考えるよりも「世の中のどこかに(相当数いる)自分と似たようなヤツのために何ができるか」を考え行動していくという、いわば視点の転換を図ることがむしろ大事なのではないかということ。うん、悩める中年にはとてもいいヒントになりそうです(笑)。

それにしても、むかし日テレの歌番組「夜もヒッパレ」にFolder 5のメンバーとして出演していたあの華奢なお人形さんのような少女が、こんなに大人になって……。間違いなく若手の女優のなかではピカイチの存在。美貌と演技力はもとより、歌もアクションもできるし、そして何よりこの意識の高さ。ますますファンになりましたよ、このトークショーを聞いて。これからも期待です。
さて、映画『愛のむきだし』は評判に違わぬ大傑作。ありとあらゆる映画の面白い要素をこれでもか、これでもかと詰め込んだサービス満点の作品で4時間という長さをまったく感じさせませんでした。もちろん、満島ひかりさんの魅力は大爆発。必見の映画です。
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