Rita Coolidge@Billboard Live Tokyo

昔から女性ボーカルには明快な好みがありまして。ギンギンに歌い上げる癖の強い脂身派ではなく、サラッと歌う淡泊な笹身派。声はハスキー過ぎず、しかしクリーン過ぎず。Sara よりElla、Brenda LeeよりPeggy Lee、LuluよりPetula ClarkJanis JoplinよりDusty Springfield、Celine DionよりGloria Estefan、絢香より青山テルマ(?)。ということで、阪神終戦の痛手を癒しに(?)、翌10月11日に六本木のビルボードライブ東京にRita Coolidgeを観に行ってきた。
The BeatlesのBoxの陰に隠れて彼女の初期の8枚のアルバムがまとめて再発されているのだが、誰も知らんやろうなあ(そういう自分も未購入なのだが…)。“You”や “Higher and Higher”といったヒット曲、そして数々のカバー曲の名唱で有名な彼女だが、じつは元々はスワンプ・ロック系のSSW。とくにファーストとセカンドアルバムのNice Feelin'は名盤だ。その昔にはデラニー&ボニー・アンド・フレンズにも参加していて、カーペンターズで売れた“Superstar”は、その時に一緒にツアーしていたEric Claptonのことを歌った曲らしい(当日のステージでも証言していた)。とにかく彼女の最大の魅力はその上質なコットンを連想させる声、そして抜群の楽曲解釈力だろう。原曲の顔立ちを忘れてしまうほど自分のボーカルでギンギンに曲そのものを塗りかえてしまうシンガーもいて、それはそれですごい才能なのだが、Ritaおばさんの場合はあくまでナチュラルメイク。薄塗り! 元々の顔立ち、楽曲の輪郭はあくまで大切にしながら新しい魅力を付与してしまう品の良さを持っている。原曲の魅力を尊重したカバースタイルは、まさに「女・徳永英明」(?)。
さて前置きはこの辺にして、ライブ、ライブ。どうやら最近Jazzのアルバムを出したようで、オープニングはJazzもの。続いて“We're All Alone”のJazz Version。なんかこのあたりは私としてはピンと来ないアレンジだったが、やがて前述のSuperstarや、Ray Charlesの“Come Rain, Come Shine”、Peggy Leeの“Fever”(やっぱりPeggy Leeと同一路線だと確認!)、さらには元旦那のクリス・クリストファーソンの作品を披露した中盤あたりから、隠そうにも隠しようのない泥臭いスワンプ・テイストがようやくほのかに漂ってきて(楽曲が粘っこいのに声はあくまでアッサリ…これが彼女の真骨頂です)、バック(g/p/b/ds)の演奏ものってきた。会場の温度も上がったところで“The Way You Do The Things You Do”“How Sweet It Is”といったモータウンナンバーでもう一段盛り上げ、“Higher and Higher”で本編終了。アンコールに応えてJazzを一曲。なかなかに楽しめたステージだった。バックバンドのGuitarのJohn McDuffieって、もしかしてAl Kooperと一緒にやってた人かな? なかなかツボを押さえた好演でありました。それにしてもJazzパートを減らして、もう少し昔の曲をやってほしかった。しかし、最近はそちらのJazzyな方向にシフトしているのかな。アップテンポの曲は少々歌うリズムがもたつくようなところもあったし…でも、Superstarではたしかに「真心」のようなものが3階席にも届いていた。さすがの貫禄。
ビルボードライブ東京、昔の日清パワーステーションみたいな三層構造で、なかなか見やすくておすすめです。一人で行っても気兼ねせずに楽しめるし。ただし、一体感を味わいたい方は1階席が良いのかもしれません。ゆったり落ち着いて見たいなら3階のカジュアルシートもよろしいかと。

The BeatlesのMono Box、迷ったあげくアメリカのAmazonで輸入盤直輸入。日本盤より1万2千円くらい安く買えた。ひょんなところで円高の恩恵が…(笑)MonoのないLet It BeとAbbey RoadはStereoで輸入盤購入済みなので、久しぶりに来週は全曲通して聴いてみよう。楽しみだ。
ナイス・フィーリン(紙ジャケット仕様)