ヨコハマを味わう

テレビ番組のインタビューで北野武氏が語っていたが、亡くなった御母堂から「並んでまでメシ食うもんじゃない」とよく言われたそうだ。それを見て「うちと一緒じゃん!」と思った私。どれだけ評判の店であっても入店待ちの列に並ぶくらいならよそに行くわい、と思う困った性質。なにやら、配給を待つ列に並ぶようで気がひけるのだ。そういえば昔、スポーツクラブの周回レーンを他の大勢の人と連なって走ったときも、何やら自分がブロイラーの鶏にでもなったような気がしていきなりテンション下がってやめたっけ。でもね、本音をいうとね、おいしいものをとにかく食べてみたいの(笑)。ということで、先週の大型連休の間、ヨコハマグルメツアーと勝手に銘打ち、おいしいものを食いまくることにしたのである。
まず、伊勢佐木長者町駅の大通り公園近くにある小さなレストラン。ご主人と奥様の二人だけでやっているこじんまりとした店だが、「いつ行っても、何を食べてもおいしい」。表現力がなくて申し訳ないが、そうしか言いようがない店なのだ。この日もタンドリーチキンのランチ。前菜の豆腐と野菜のサラダ(これがまた絶妙なタマネギ&ショウガ味のドレッシングがかかっていて…)、メインの鶏肉はたっぷり足一本分、それにおいしい付け合わせがついて、デザートとデミタス珈琲までついてなんと950円。隣に座った年の頃は50代と思しきご夫婦、その会話の内容に耳をそばだててみると旦那の方はどうやら全国くまなく美味いものを探して旅する「さすらいの食の達人」と推察されるのだが、そのおじさまでさえチキンを口に運びつつ、「うまいなあ…(しばし絶句)…これはうまいなあ」とうわごとのようにつぶやくだけ…。そう、この店にあるのは「おいしい」のひと言だけなのだ。そしてこれほど美味なものをこんなに安い価格で提供してくれるこのお店の心意気に感謝! まさにここはヨコハマが誇る名店だなあと思いつつ、いや、こんなにいい店は他の地方にもそんなにないだろうからこれはむしろ日本の名店と呼ぶのがふさわしいのではないか、と改めて思う私のマイミシュランは文句なしの五つ星!(人気が出過ぎてあまり混むと困るので名前は書かないけども)
翌日。この店からそんなに遠くない場所に横浜橋商店街という日本・中国・韓国・東南アジア入り乱れる活気あふれるグローバル・アーケード市場があるのだが、そのアーケードを抜けてちょい曲がったところにある古くからの大衆中華料理店。ここがまた、何を頼んでもうまい! 安い! 店内は地元の方々とおぼしき人々がお年寄りからご家族連れから独り身風の人まで、いっぱいである。お店の賄いメシから昇格したという人気メニューを中心に、いろいろと頼んだのだが中でも絶品は「トマト入り肉団子」。これ、激しくヤバイ。歯ごたえのある肉の中から熱々の甘いトマトの果肉が…うまい! 何個でも食べたい! またお店の人たちも親切でね、席を立とうとするお年寄り夫妻に、「もう帰るの? もっとテレビ観て行ったら?」と声をかける店の兄さん。ああ、やっぱり東京でもヨコハマでも下町は人情があるなあと感動。思わずこの近辺に引っ越したろかと思ったほどである。食後にお店の人と、昔懐かしいハマのメリーさん(伝説の老娼婦)の話にしばし花を咲かせた。メリーさんについては彼女のドキュメンタリー映画が公開されたときに文章を書いたことがあるので、これはまた別の記事としましょうか。
さて連休中にはこのほかに、(ヨコハマではないが)横須賀で非常にうまいマグロとヒレカツ食べた(店には前首相と議員になったご子息が来店したときの写真が:笑)。横須賀名物の海軍カレーは主義に反してせっかく並ぶ意欲を見せたのに、食材が終了したとかで我々の前の人で列をうち切られてしまった。トホホ。その代わりといってはなんだが、悔しいので三笠まんじゅうを食べた(休日の米兵さんたちも並んで買っていた。好きなのか?)。新型の青いロマンスカー乗りたさにわざわざ表参道から出かけた箱根では、宿の夕餉の牛しゃぶに舌鼓。そして横浜西口からほど近い岡野町にあるうどん屋のつけメンライクな讃岐うどんもをまたなかなかのお味。そして、29日はY150開国博も最終日ということで、赤レンガ倉庫前まで行って例の「クモ」(ラ・マシン)を、道路越しではあるがけっこうクリアに、かつ無料で観覧したのだが、市民としてせめてものイベント協力にとワールドレストランでFish & Chipsもどきとマンゴ&アボカドジュースをとって、僅かながら売り上げに貢献。Y150といえば、ちょうどその最終日の夜にテレビ番組に前市長が出演していたが、コメンテーターからのY150の責任に関する追及に「詳しくは私のブログを見てください」の一点張り。ブログの弁明はともかく、やはり閉幕前に急に辞任した彼の場合、途中で投げ出した感はぬぐえんなあ…と思いつつ、そういえば彼はヨコハマディープ地帯のピンク街を「浄化」しようとしていたそうだが、街というのはやはり陰と陽の部分の両方があってはじめて魅力を持つのだし、不思議なことにそうした街の周辺には安くておいしい店がなぜか集まってくるものなのだな。そんなヨコハマってやはりなかなか面白い街だなあと思いを新たにしたシルバーウィークでありました。

さて、10月に入り3位争いから広島が脱落。ついに一騎打ちか…。ヤクルト、ここ数年天敵化してるので不安だが、いずれにせよ8日・9日の直接対決までもつれそうだな。Jリーグの方もここにきて鹿島が失速。上位も下位の降格圏内の争いも面白くなってきた。